暗くて愚かなニクいやつ。

冴えない成人男の女装ブログ、一言ネタ回増量中です。つまり手抜きです。

5股男と規格外ヒロインの決別の旅『バイバイ、ブラックバード』感想

こんばんは、あんぐろいどです。

今日は読書感想文です。

 

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 『バイバイ、ブラックバード』伊坂幸太郎

を読みましたので、感想をまとめたいと思います。

 

物語の核心となる深い部分までは語りませんが、

多少のネタバレを含みますので、ご了承下さい。

 

 

 

 

あらすじ

星野一彦の最後の願いは何者かに<あのバス>で連れていかれる前に、五人の恋人たちに別れを告げること。

そんな彼の見張り役「常識」「愛想」「悩み」「色気」「上品」--これらの単語を黒く塗りつぶしたマイ辞書を持つ粗暴な大女、繭美。

なんとも不思議な数週間を描く、おかしみに彩られた「グッド・バイ」ストーリー。

 

 

 

率直な感想

 

 

んもうめ〜〜〜〜〜〜〜〜っちゃ好き!!!!!

伊坂先生〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!

俺だよ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!

 

 

 

って気持ちでいっぱい。誰だよ。

 

裏表紙に記載されているあらすじ部分から、

もうめちゃくちゃ興味をそそられる1冊です。

 

「<あのバス>で連れていかれる!?」

「五人の恋人!?」

「粗暴な大女!?」

 

それらの印象的な言葉が、僕の心に引っかかる取っかかる。

 

物語全体に渦巻いている謎の正体に近付きたくてページをめくる手が速くなる一方、「読み終えるのがもったいないな」とも思ってしまうような、そんな傑作小説です。

 

ちなみに本作は、五人の恋人たちそれぞれ一人ずつに各1話+エピローグの6で構成されています。

(その後に解説、作者へのロングインタビューと続きます)

 

 

 

気に入った部分

繭美

この物語を語る上で欠かせないのは何と言っても、

規格外ヒロインである繭美の存在。

 

 

 

身体もでかければ、腕も脚も太く、何から何まで規格外で、おまけに態度も大きく肝も据わっている。僕には、彼女が別の生き物にしか見えなかった。

 

「身長が百九十センチ、体重は二百キロあるんだ、でかいだろ」と彼女は初めて会った時、聞いてもいないのに、言った。その数字が正しいのかどうかは分からないが、スポーツや格闘技をやっていない女としては、破格に大きな身体だ。しかも、肌は白く、ブロンドの髪で、「ハーフだ」と言うのだから、訳が分からない。()白人の金髪女性で、シックな背広に身を包んでいる、となれば男の目を惹く、眩しいほどの美女を想像してしまうが、繭美の場合はまるで違った。国籍不明の怪人がスーツを着ているようにしか見えない。しかも、「ハーフだ」という割には、日本語しか話せない。

 

 

 

身体も大きければ言動や態度もふてぶてしく、何を言われても動じない鋼のメンタルも持つ。

そして人を不愉快にさせることが何より愉快という、常人にはとても理解できない性格の彼女は、主人公・星野の恋人たちやその他の登場人物と衝突しまくります。

 

僕が特にお気に入りなのが、そんな彼女を星野が形容している部分。

 

 

 

彼女はおそらく、他人との人間関係を円滑に維持しようという考えがはなからないのだろう。好き好んでなのか、やむをえなくなのかは分からないが、とにかく、何かと接するたびに軋轢を生むという意味では、ハリネズミかスパイクタイヤか、もしくは繭美か、という具合ではなかろうか。

 

 

 

架空のキャラとはいえ、人によっては彼女の発言に不快感を覚える人も一定数いると思います。

僕も実際に繭美のような人と現実で話す機会があれば(そうそう無いと思うけど)、間違いなく「この人は苦手だ」と距離を置くことになるでしょう。

 

そんな強烈な繭美ですが、僕は本を読めば読むほど彼女に対しての印象が変わっていきました。

要所要所で妙な説得力がある発言をする彼女は、物語の大きなアクセントとして働きます。

 

ちなみに、僕の頭では『大きな女性』という情報がどうしてもマツコ・デラックスにしか変換できなかったため、ずっとマツコ・ヴォイスで脳内再生されてました。繭美の荒い口調との親和性は抜群です。

以前放送されていた実写ドラマ版ではなんと俳優の城田優が繭美役を務めていたそうです。

 

 

 

星野一彦

ここまで繭美のことに多く触れてきましたが、

主人公の星野一彦も一風変わった人物であることが、物語を通して浮かび上がってきます。

 

そもそも彼は物語開始当初にすでに5をかけており、返し切れない多額の借金の清算として「とても人間が健全に生きられない場所」に<あのバス>で連れていかれることが確定しています。

どう考えても、いわゆる『普通の世界』の『普通の人』的な位置付けではありません。

 

 

 

とはいえ彼は決して軽薄な女たらしというわけではなく、女性を騙して利益を得ようという魂胆もありません。

 

全ての女性に一生懸命なんですよね。

 

……ここだけ聞くと、僕が浮気男を擁護しているみたいな感じですけれど、

でも「全ての女性に一生懸命」というのも事実なんですよ。

 

作中でも「誰か一人を選ぶつもりなんてなかった」「どの人と一緒にいるのも楽しかった」と発言していて、その言葉に嘘がないんですよね。

やっていることは5股ですけど。

どこか憎めない彼のキャラクター性も、この小説の魅力です。 

 

 

 

そんな星野と繭美の関係性の変化にも注目です。

パワーバランスは基本的に、

 

強烈なプレッシャーを放つ監視役>>>>>5股借金男

 

なんですけれど、物語が進むにつれて星野が繭美のことをだんだんと分かってくるんですよ。

彼女の『面白そうなことに首を突っ込む』という性質を利用したり、彼女の嫌味に皮肉を返したり。

そこで繰り広げられる掛け合いの巧さは、さすが伊坂幸太郎、って感じです。

 

 

 

五人の恋人たち

各話に登場するヒロインたちのエピソードも、それぞれ魅力的です。

 

個人的には、彼女たちの人物像や話の展開は、実際に本を読んで知っていただきたいので、その辺の詳細は省きますが、ざっくりと、特に気に入っている部分を二つ紹介します。

 

 

 

3話のヒロイン

物語の真ん中である第3話に登場する彼女が、僕は一番好きでした。

 

星野と彼女は、深夜1時過ぎの大通りで出会います。

星野から「いったいどこへ行くつもりなんですか」と声を掛けた経緯もあり、読者は「おいおい、ナンパか?」と思ってしまいますが、読み進めるごとに徐々に異変に気付きます。

そして、第3話のヒロインである彼女がぶっ飛んでいることを知ります。

 

どれだけぶっ飛んでいるかというと、それまでの作中では全くの怖いもの知らずだった繭美すら動揺させるほど。

 

作者さえ「この話が一番難航しました」と巻末インタビューで語るほど突拍子のない第3話のヒロインは、派手なアクションシーンが好きな方にオススメのお話です。

 

 

 

5話の終わり方

最後の一人に別れを告げるこのお話の最後は、ある登場人物の涙で締めくくられます。

しかしその理由は、読者にしか分からない構造になっています。

 

周りにいる登場人物は、涙を流す人物を見て「なんだなんだ?」と慌てているんですが、僕たち読者はその理由を知っているため、ニヤリと笑みを浮かべることができる。それってすごくないですか?

 

この仕掛けには、もうめ〜っちゃめちゃ膝を打ちました。

胸のすくような思いを味わえる第5話はオススメです。

 

 

 

気になった部分

「すべての謎がハッキリと、完全に明かされないとイヤ!」という方は要注意です。

あえてボカされている部分もあるので、人によっては「読後に残るモヤモヤが許せない」という受け取り方をするかもしれません。

 

僕個人としては、必ずしも全てを明確にする必要はないと思っています。

 

そりゃあ、推理小説がトリックの矛盾に言及されないまま終了した場合とかだと、「ちゃんと説明してくれよ!」となるかもしれません。

 

しかし全ての詳細が明らかになっていなくても、

この『バイバイ、ブラックバード』という作品は十分に楽しむことができます。

 

読後感も決して、一言で「暗い」と言い切れるものではなく、

読者の想像をかき立てる、味わい深いシメ方になっています。

 

 

 

まとめ

 

「好きな小説家は誰ですか?」と僕が問われた際、

必ず名前を挙げるうちの一人が本作の著者である伊坂幸太郎です。

 

熱心なファン、というほど全作品を網羅してはいないですけれど、

「この作者が好き!」と言えるぐらいの冊数は、

少なくとも他の作者と比較すればですが、読んできたと思います。

 

そんな僕から見ても、この『バイバイ、ブラックバード』という作品は、

僕の心に強烈に残りました。それぐらいには大好きです。

以上、読書感想文でした。

 

 

 

個人的な話ですが、思えば社会人になって以降(ここ4年ぐらい)は、あまり伊坂幸太郎の作品に触れてきていませんでした。

主に読んでいたのが学生時代だったため、その頃には小難しく感じて挫折した作品もありました。

そんな作品も今読むと違う感想を抱き、本作『バイバイ、ブラックバード』を上回る可能性があるかもな、と、この歳になって読書をすることで思いました。

また機会があれば、一度読んだ作品も読み返してみたいな。

 

そんな感じで、本日はこの辺で。

それでは、あんぐろいどでした。